薔薇の名前

14世紀のヨーロッパ。教皇ヨハネス22世と後の神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ４世が権力争いを繰り広げていた。若き見習い修道士アドソは果てなき戦争と皇帝軍の将軍である父の生き方に疑問を抱き、清貧を重んじるフランチェスコ会のウィリアム修道士と行動を共にする。ウィリアムは皇帝の指名を受け、教皇使節団との会談で神学論争に決着をつける任務を帯びていた。だが、その舞台となるイタリア山中のベネディクト会修道院で彼らを待ち受けていたのは、修道士アデルモの変死体だった。細密画家であったアデルモが働いていた文書館に秘密があるようだが…。ウィリアムが修道院長の依頼で調査を始めてまもなく、第二の変死体が発見される。

豚小屋でヴェナンツィオの遺体が見つかり、修道院は騒然となる。ウィリアムは薬学僧のセヴェリーノと遺体を検分し毒殺を疑う。文書館長補佐のベレンガーリオはアデルモの亡霊を見たと告白、修辞学の専門家ベンチョはベレンガーリオとアデルモの怪しい行動をヴェナンツィオも見ていたとウィリアムに告げる。最長老のアリナルドは一連の出来事とヨハネの黙示録の関連を示唆、ウィリアムとアドソは夜の文書館へ忍び込んで手がかりを探ろうとするが…。

事件を追うウィリアムは、厨房係のレミージョとサルヴァトーレがかつて異端のドルチーノ派に属していたのではないかと疑い始める。その頃、会談のために修道院に向かっていた異端審問官ベルナール・ギーは襲撃を受け、辛くも難を逃れる。彼を狙ったのは、ドルチーノの恋人だった女性マルゲリータの娘だった。一方のアドソは旅の途中で出会ったオクシタン地方の娘と森で再会。胸をときめかせながらも、女性を愛することは罪なのかと思い悩んでいた。その晩、アデルモと同性愛関係にあった文書館長補佐のベレンガーリオが失踪。修道士たちの受難は、はたして老僧アリナルドが示唆するように黙示録の描写をなぞっているのか。

ベレンガーリオの遺体はヴェナンツィオと同様に、指先と舌が黒く変色していた。ウィリアムはヴェナンツィオが残した文章を解読する。文書館の図面を描き上げたウィリアムとアドソは再び夜の文書館へ侵入、多くの書物に圧倒されながら各部屋に記された文言の頭文字を組み合わせ“アフリカの果て”があると思われる場所までたどり着く。しかし中へ入ることはできず謎解きを続けることに。アドソが森で出会った娘と言葉も通じぬまま心を通わせていく中、教皇使節団と皇帝側使節団がそれぞれ到着する。

フランチェスコ会士から成る皇帝側使節団と、対する教皇側使節団が修道院に到着。歓迎の食事の席で、審問官ベルナールは見覚えあるレミージョの姿に目を留める。その晩、ウィリアムとアドソはレミージョと話し、やはり彼が過去にドルチーノ派に属していた事実を知るのだった。翌日、森にいる娘に食べ物を届けたアドソはごく自然に彼女と結ばれる。その午後、ついに両使節団による会談が開催された。フランチェスコ会総長のミケーレを始めとする会士らはキリストの清貧を主張し、富に執着する教会と教皇を批判。教皇側は激怒し、会談は暗礁に乗り上げてしまう。

会談再開の直前、セヴェリーノがウィリアムのもとに来て施療院に“奇妙な本”があると告げる。ウィリアムは後で行くと言って会談に参加するが、その最中、セヴェリーノは施療院で殺されてしまう。現場で逮捕されたのは、室内を荒らして何かを探していたレミージョだった。ウィリアムとアドソ、ベンチョは本を捜すが見つけられない。ベルナール・ギーは殺人と異端の疑いでレミージョの審問会を開く。一方、姿を消した娘の身を案じたアドソが、サルヴァトーレの不可解な言動に疑念を抱き製紙場へ向かうと…。