熱帯雨林の島ボルネオ島には、6万種に及ぶ動植物が生息。そのうち6千種は島の固有種であり、さらに新種が日々発見されている。しかし、森林の下の土壌は栄養に乏しく、その奪い合いこそが、地球で最も生物多様性に富んだ場所となった理由のひとつだ。ジャングルでは、テングザルやオランウータンが子どもを育て、マレーグマがハチミツを探す一方、世界一背の高い熱帯樹メランチや、驚くべき進化を遂げたウツボカズラなど、ここでしか見られない植物も多い。また、巨大な洞窟はコウモリの巣となり、そのフンが特殊な生態系を作り出している。

世界最古の砂漠と言われるナミブ砂漠を棲みかとする生き物の数は他のどの砂漠より多い。気温は50度近くに上がり、年間降水量はミリ単位というこの場所でなぜそれが可能になったのか、別名ガイコツ海岸を覆う海の霧など、知られざる水源がその鍵になっている。本来なら砂漠では生きていけないはずのカエルやライオン、ゾウのほか、ダチョウ、ジャッカルなど、ナミブ砂漠の特性を生かして命をつなぐ生き物たちの姿を紹介する。

アフリカ東部の大地溝帯の奥部に広がる「時を忘れた土地」ことルアングワ渓谷。ここには、他の地域で見られなくなった本当のアフリカが豊かに生きている。雨季にルアングワ川が氾濫すると、草が広く茂り、インパラなどの草食動物が広範囲に散るため、彼らを獲物にするヒョウやライオンは狩りに苦労し、乾季には、肉食動物が水場に集まる獲物を襲いやすくなる。一方、キイロヒヒやカバは、ルアングワ川の特性に適応しながら、仲間と助け合って子育てをしている。また、ブチハイエナやハゲワシなどの清掃動物の活躍により、サバンナは清潔が保たれ、病気が蔓延することもない。絶妙なバランスによって、このエメラルドの楽園は今も守られている。

陸地から千キロ以上離れた太平洋の沖に浮かぶガラパゴス諸島、そこに棲む生き物は他では見られないものばかり。嵐や海流で運ばれてきた生き物たちが、競争相手のいない島で独自の進化を遂げた結果、現在、2千種以上の島固有の動植物が生息している。有名なウミイグアナの他、赤道直下に棲む唯一のペンギン、知的な狩りをするアシカ、巨大なゾウガメなど、ここにしかいない生き物たちの生態を紹介する。

南米大陸の最南端に広がる「最果ての地」パタゴニア。アンデス山脈の高地から海岸沿いのフィヨルドまで、それぞれ地形も気候も大きく異なるため、生き物たちはその環境に適応して命をつないできた。高い山の上ではビスカッチャやアンデスネコが特性を生かして山の暮らしを楽しみ、氷の砂漠ではパタゴニアカイツブリがダンスを披露、フィヨルドではミナミゾウアザラシやマゼランペンギンが豊かな海の恩恵に浴している。

手つかずの自然が残るアラスカ南東部。広大な温帯雨林には、ハチドリやモモンガが暮らし、世界で最も多くのヒグマが生息することで知られている。この地域に生きる動物たちの命をつないでいるのは、サケの遡上だ。ヒグマはもちろん、ハクトウワシもその到来を待ちわびる。また、その食べ残しが森の栄養となり、巨木を育てる土壌も作っている。