直江兼次(なおえかねつぐ)は、上杉家の一家臣でありながら秀吉や家康を魅了し、恐れさせた戦国の知将です。血なまぐさい欲望が渦巻く時代に「愛」の兜(かぶと)を掲げ、民と故郷を愛し、義を貫いた姿は異彩を放ちます。謙信との師弟関係、主君・景勝との信頼のきずな、石田三成との友情、年上女房・お船との情愛など、愛と誇りと勇気を現代によみがえらせるドラマです。泣き虫の兼続が迷いながら成長していく姿も魅力的です。
エピソード1
第1回 五歳の家臣
永禄7年(1564)、越後上田庄の坂戸城主・長尾政景が死に、上杉輝虎(後の謙信)が弔いに現れます。政景の妻・桃は輝虎の実の姉です。桃は髪を下ろし仙桃院(せんとういん)となり、政景の子・喜平次(後の景勝)は輝虎の養子になります。仙桃院は、10歳の喜平次とともに成長し腹を割って話せる家臣を望み、長尾家家臣・樋口惣右衛門の長男・与六(後の兼続)に白羽の矢が・・・。与六は5歳で喜平次の家臣になったのです。
エピソード2
第2回 泣き虫 与六
永禄7年(1564)冬、喜平次(後の景勝)と与六(後の兼続)は上田庄の寺で、侍としての修業生活を送っていました。ある夜、与六は寂しさから寺を脱け出し、心配した喜平次があとを追います。雪の中を実家にたどり着いた与六は、母・お藤に追い返されます。もう歩けないと泣く与六を喜平次が背負い、「母君はお主を捨てたのでない、喜平次に下されたのだ。わしのそばにいてくれ」と語りかけます。二人の心が通った瞬間でした。
エピソード3
第3回 殿の初恋
天正元年(1573)春、14歳に成長した兼続は軍議の席で、主君・景勝の考えだとして策を述べますが、謙信はもう一人の養子・景虎の策を採ります。反省しながらの帰り道、兼続は暴れ馬にけられそうになり、一人の若い女性に鮮やかな手さばきで助けられます。上杉家筆頭家老・直江景綱の娘・お船(せん)で、兼続の従姉(いとこ)でした。数日後、兼続は景勝がお船に恋していると知り、無口な主君のためにひと肌脱ごうとします。
エピソード4
第4回 年上の女
天正元年(1573)7月、越中の混乱を治めて春日山に戻った上杉軍は、景勝と景虎の活躍に沸いていました。謙信は北条氏からの養子・景虎と景勝の妹・華姫との婚儀を決めます。兼続はお船と祝いの品を買いに遠出しますが、帰り道、二人きりで雨宿りをして気まずい雰囲気に・・・。翌年、信長が突然、謙信に屏風(びょうぶ)を送りつけてきました。真意を確かめるため、兼続は信長の使者・初音とともに信長の居城・岐阜城に赴きます。
エピソード5
第5回 信長は鬼か
天正2年(1574)5月、兼続は岐阜城で信長と対面し、義の精神をぶつけます。信長は古くさいと言い放ち、ひそかに藤吉郎(後の豊臣秀吉)に兼続を殺せと命じます。兼続の窮地を救ったのは佐吉(後の石田三成)という若者でした。翌年、信長は長篠の戦いで、鉄砲を採り入れた戦法で武田を破り、越後を脅かします。なかなか動こうとしなかった謙信は景勝らの説得でついに信長を討つ決意を固めます。兼続はついに初陣を迎えます。
エピソード6
第6回 いざ、初陣
謙信の率いる上杉軍は信長を討つため越中に侵攻。ようやく初陣がかなった兼続ですが、敵兵を斬(き)れず落ち込みます。一方、お船の婚儀が決まりました。相手は上野長尾家の景孝です。七尾城を攻める上杉の陣中で、景勝と景虎の家臣同士のいさかいが起きます。犬に景勝の幼名・喜平次と名づけてからかう景虎の家臣に、兼続が激怒して斬りかかったのです。謙信は兼続に「上田庄で己を見つめ直せ」と申し渡し、兼続は陣を去ります。
妻夫木聡
宮本信子
小松江里子