サマー・オブ・ロケット～スパイにさせられた男

1958年、ロンドン。幼い頃にロシアから亡命してきたサミュエル･ペトルーキンは、補聴器の販売で成功を収めていた。そんな中、上流階級の下院議員夫妻のキャサリンとリチャードと出会い、徐々に交流を深めていく。サミュエルは、病院で新製品スタッフ･ロケーターの実演を行う。身に着けておけば、必要な時に人を呼び出せるという画期的な装置だ。実演は見事成功し、彼らは称賛される。サミュエルは部下と共に、チャーチル元首相に補聴器を届ける。すると帰り際、2人は不審車に尾行されていることに気づく。停車して様子をうかがっていると、不審車両からスーツ姿の男たちが近づいてくる。一体彼らは誰なのだろうか?

謎の追跡者と向き合うことにしたサミュエル。車から降りてきたのは4人の男たちだった。その1人デニングから指定された場所に来るように言われたサミュエルは、翌日、とあるビルのオフィスを訪ねる。そこにはデニングとその上司フィールドが待っていた。イギリス情報局保安部 (MI5) だという2人は、秘密を誓うように迫ったうえで、サミュエルが発明したスタッフ･ロケーターに興味があると言う。怪しみながらも政府からの注文を期待したサミュエルはMI5のテストを受け、スタッフ･ロケーターの実演会を行うことにする。しかしMI5の本当の目的は注文と引き換えにサミュエルにキャサリンとリチャードをスパイさせることだった。

サミュエルは会社を建て直すため、フィールドに従ってパーティー参加者たちの情報を得ようと試みる。一方、ハンナは自宅に匿名の手紙が届き、女王に謁見せずパーティーにも参加していなかったことが両親にバレてしまう。自分を理解してもらえないハンナは、家を飛び出していく。サミュエルは、工場にやってきたアーサーから、フィールドの正体を知らされる。フィールドに疑いの目を向けだすも、契約書に署名するためにフィールドのオフィスを訪れる。しかし、そこでフィールドの飼い犬ガイの不思議な反応に気づき、驚愕することになる。

キャサリンはポールからもらった住所を訪ねるが、そこにアントニーの姿はなかった。一方、フィールドたちの上司であるアームストロングに会ったサミュエルは、ショー夫妻と交流のある人々の中に国家の敵がいるかもしれないと聞かされる。サミュエルは悩みながらもフィールドたちとスタッフ･ロケーターの契約を締結。仕事を受注する見返りに、またしてもショー邸で情報を探ることになる。フィールドの指示どおりショー邸を探っていたサミュエルだったが、アーサーからこのままでは命が危険だから逃げろと助言され、誰を信用すべきか分からなくなってしまう。

サミュエルは軍事施設で銃撃に巻き込まれて負傷する。銃撃の直前、急にその場を去ったフィールドに対し、強い不信感を抱きだす。しかしアーサーとリチャードのことも信頼しきれず、誰が敵なのか1人戸惑い始める。一方、キャサリンはエスターの指摘から、アントニーが描いた絵に有力な手がかりをつかむ。そして彼を捜しに、あるホテルへと向かっていく。サミュエルはアーサーとリチャードから、マドックス大将を紹介されるが、彼から差別的な言葉を聞いて憤慨する。誰も信用できなくなったサミュエルは、再びフィールドと会うことに。しかし約束の時間に彼のオフィスを訪れた彼は、驚きの光景を目の当たりにするのだった。

キャサリンは息子を捜すために滞在したホテルでアントニーそっくりのデイビッドという青年を見つけ、強引に家へ連れ帰る。その頃、オフィスを襲撃されたフィールドは上司のアームストロングと共に、ショー夫妻の背後にどんな人間が関わっているのかをサミュエルに説明。クーデター阻止に力を貸してほしいと頼む。マドックスの発言をきっかけにリチャードたちへの不信感が高まっていたサミュエルはフィールドたちに協力することを決意する。かくしてサミュエルはクーデター計画の決定的な証拠をつかむため、アーサーやリチャードたちの集まりに参加するのだった。