亡国のスパイ～かくも親密な裏切り～

ニコラス･エリオットは、親友キム･フィルビーの亡命に手を貸した疑いで、MI5捜査官リリー･トーマスに尋問される。一方、モスクワに到着したフィルビーは、英雄として迎えられるどころか、KGBのセルゲイから厳しい尋問を受ける。互いに信じてきたものが揺らぎ始める中、ふたりのスパイの過去が少しずつ明らかになっていく。

リリーは、尋問だけではエリオットから有力な情報を引き出せないと見抜き、彼の行動を通じて秘密をあぶり出す心理戦を仕掛ける。一方、モスクワに到着したフィルビーは、なぜ自らが共産主義者であり、危険な二重スパイになったのか、その理由をセルゲイに語り始める。言葉では語れない真実が、静かに姿を現していく。

エリオットは、第二次世界大戦末期に起きたロシアの戦争犯罪を引き合いに出し、かつての盲信が原因で見逃していた別の裏切り者をあぶり出す。その記憶に伴う痛みと罪悪感をリリーに打ち明けることで、彼女に心を開き始める。疑念と対立の中で、ふたりの間に新たな信頼と同盟関係が芽生えつつある。

フィルビーは、CIAに協力しているのか、それとも裏切ろうとしているのか――KGBの尋問官たちを巧みに翻弄し、その真意を読ませない。一方エリオットは、第3話で正体を暴いた裏切り者アンソニー･ブラントの後を追い、MI5長官でありリリーの上司でもあるロジャー･ホリスとの密会現場を目撃する。さらなる裏切り者の存在が浮かび上がる中、疑念の輪はMI5の中枢へと迫っていく。

エリオットはリリーと協力し、ロジャー･ホリスを挑発して正体を暴こうと仕掛ける。一方モスクワでは、フィルビーが自身の罠にかかったCIA工作員2人をKGBが無駄に殺害したことに深く心を痛める。孤独に苛まれ、頼れる友もなく、彼は酒に溺れ、やがて病院へと運ばれてしまう。

病床のフィルビーは、長年の友情に訴える手紙をエリオットに送り、和解を申し出る。しかしエリオットとリリーは、フィルビーに利用される危険性に気づき、ホリスがむしろ無実である可能性が高いと悟る。クリスマスのベルリンでフィルビーと対面するエリオット。こうして彼の友情は終わりを告げるが、同時にリリーとの新たな信頼関係が始まろうとしていた。