花不棄〈カフキ〉‐運命の姫と仮面の王子‐

己の運命を知らぬまま、赤子の頃から世を渡り歩く生活を続ける花不棄。家族と呼べるのは、本当の名を捨てた九おじさんと元野良犬の阿黄のみ。おじさんから目立つ行動を禁じられている不棄だが、おじさんの病を治すため隠れて商いに精を出していた。品物を買いつける途中、義侠の悪者退治の場面に出くわした不棄は、蓮衣客と運命的な出会いを果たす。実は蓮衣客は、信王の嫡子であるチンイク。チンイクは父が探している異母妹が不棄ではないかと疑いの目を向ける。

病に倒れた九おじさんはすでに手の施しようがない状態だった。花不棄は霊薬・回春丹にわずかな望みを懸けて薬霊荘に赴くが、2粒しかない回春丹は、すでに街で出会った道楽息子・陳イクの手に渡っていた。

九おじさんは花不棄をかばって刺客の刃に倒れるが、間一髪で蓮衣客に助けられる。そして、追っ手から身を隠すために小芝居を打って薬霊荘に潜入。泥を落とした不棄の顔を見て、荘主の林満堂はその出自に気づく。

賊が侵入したどさくさに紛れ、薬霊荘を抜け出した花不棄。ところが賊を捜索する家職や護衛に見つかってしまい、その場にたまたま居合わせた莫若菲とその従者に賊の濡れ衣を着せ、自分は姿をくらます。

花不棄は訳もわからず薬霊荘の令嬢になってしまった。信王の命を受け、信王と薛菲の間に生まれた娘を捜しに西州府を訪れた莫若菲は、林満堂に取引を持ちかける。明月山荘の支配から逃れたい満堂は不棄を若菲に託す。