すべて忘れてしまうから
ハロウィンの夜、彼女が消えた・・・。 ミステリー作家として生計を立てている”M”には、5年間付き合っている恋人“F”がいた。締め切りが重なり、Fとなんとなく連絡を取らないまま3週間が経った時、行きつけの”Bar灯台”に、Fの姉と名乗る女性が現れた。ハロウィンの夜からFが音信不通で行方不明だという。 「渋谷駅がすごい人なので遅れます」 姉と同じ内容のメッセージが送られてきていたMは、促されるままに彼女を探し始める。そこで出会う人々から語られる彼女は、自分が知る“F”ではなかった・・・。 何も変わらなくていい、とそれなりに毎日の生活を楽しんでいたМだが、Fを探す中で、変わろうとする人たちの他愛もない問題に巻き込まれてしまう・・・。 特別なことは何ひとつ起きないと感じている日々の中にも、小さな特別はいつも存在している。自分やその周りに生活する人たちにも、それぞれに“誰も知らない私”を持っている。恋人の行方を探しながら、日常の穏やかな変化に気付いていく、情けなくも愛らしいヒューマンドラマ。 この作品には激しい光の点滅を伴うシーンが含まれています。光に敏感な方はご注意ください。